Secret Goldfish(シークレット・ゴールドフィッシュ)
小泉雅史氏による1991年のライナー・ノーツ
(CD:My Nine Secretsより)
シークレット・ゴールドフィッシュはこの先いったいどこまで成長するのだろう。僕はこの若いロック・バンドの可能性について考えるだけでワクワクしてくる。まだ20歳そこそこという彼らに初めて会ったのは去年(90年)の終わり頃だった。イギリスから来日していたLUSHのインタビュー取材の際、日本コロムビアのロビーでメンバー2人(三浦出+中畑)に突然デモ・テープを手渡されたのだ。僕はこのバンドの存在自体まったく知らなかったが、聞けば彼らはLUSHの大阪公演のフロント・アクトを務めたのだという。しかもこの大抜擢は、メンバーが渡英した際、直接4ADにデモ・テープを持っていって気に入られたことがきっかけだったようだ。今の若い奴にしてはスゴイ根性!?僕はデモ・テープを聴く前からこのバンドに興味を持ってしまった。彼らからもらったデモ・テープには“ステッピン・ストーン”の2ヴァージョンを始め4曲ほど入っていたと思う。演奏はハッキリ言ってお世辞にもうまいとは言えない。しかし、イキイキとしていた。僕は一度彼らのライブを観てみたいと思い、川崎チッタで予定されていた“REMIX NIGHT”(5/2)にヴィーナス・ペーターとともに出演してもらうことにした。彼らのライヴは東京近郊では初めてだったと思うし、おそらくチッタ・クラスのデカい箱で演奏するのも初めてだったと思う。しかし、そのステージは予想以上に素晴らしかった。まだまだ荒削りとはいえ、ヘタなマンチェスターのインディー・ダンス・バンドなんかフッ飛ぶくらいのグルーヴ感があった。ロックだろうがハウスだろうがまったく屈託なく自分たちの音楽の中に取り込んでしまうところに彼らの可能性を感じた。
あれから半年足らず、彼らは早くも待望のレコード・デビューを飾る。しかもフル・アルバムで。『My 9 Secrets』と題されたこの作品には、彼らのこの半年間の成長ぶりが集約されている。デモ・テープを聴いた時に感じられた当時流行りのマンチェ・ロックの影響は次第に薄れ、より自信に満ちたオリジナリティー溢れる演奏へと向かっている。そして、このバンドの最大の魅力とも言うべきサイケデリック/アシッド・グルーヴには益々磨きがかかり、60年代後期のオリジナル・サイケデリックをちょっと知ってるつもりの僕のようなオヤジにも“ウ~ン、シブイ”とうならせてしまうだけのパワーを感じる。この若さにしてこのサウンド・・・・それはまるで僕らがライドに対して思う気持ち、つまり彼らがこの先どこまで成長し続けるのだろうかという期待感を抱かせる。恐るべき子供たち、シークレット・ゴールドフィッシュ・・・・・僕は彼らが海外でも通用するようなスケールの大きいバンドに成長してくれることを心から望んでいる。
小泉雅史(REMIX)